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名古屋地方裁判所 昭和47年(ワ)488号 判決

原告(反訴被告)

塚本鏡一

被告(反訴原告)

松井隆一

主文

一  本訴原告(反訴被告)の請求を棄却する。

二  反訴被告(本訴原告)は反訴原告(本訴被告)に対し金一万五、〇〇〇円および内金一万三、〇〇〇円に対する昭和四十七年三月一〇日から、内金二、〇〇〇円に対する本判決言渡の日の翌日から各支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

三  反訴原告(本訴被告)のその余の請求を棄却する。

四  訴訟費用は本訴、反訴を通じ、これを三分しその二を本訴原告(反訴被告)のその余を本訴被告(反訴原告)の負担とする。

五  この判決主文第二項は仮に執行することができる。

事実

(本訴)

第一申立

一  本訴原告(反訴被告)―以下単に原告という―(本訴請求の趣旨)

1 被告(反訴原告)―以下単に被告という―は原告に対し金五八四万四、六七〇円および右金員に対する本訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

との判決ならびに仮執行の宣言を求める。

二  被告(本訴請求の趣旨に対する答弁)

1 原告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

との判決を求める。

第二主張

一  原告(本訴請求の原因)

1 交通事故の発生

原告は左の交通事故により損害を蒙つた。

(1) 日時 昭和四三年八月二八日午後六時ごろ

(2) 場所 愛知県西加茂郡三好町大字打越字石坂一三一番地先路上

(3) 加害車 被告運転の普通貨物自動車(パブリカバン)

(4) 態様 原告が原付自転車に乗つて、前記路上を南から北北東方向のカーブに添つて時速約一五キロ位で進行していたところ対向方向から進行してきた被告が右カーブを内回り急速度でまわつたため、原告進行車線にはみ出し、もつて加害車の右前部を原告の右下腿に衝突させたもの。

2 帰責事由

被告は約九〇度に近い急カーブの本件事故現場において徐行義務に違反し、慢然急速度で進行した過失と、見通しの悪いカーブの状況に応じて他人に危害を及ぼさないような速度と方法で運転すべき義務に違反し、急速度でかつ道路右側にはみ出して進行した過失により、又加害車両の所有者として民法七〇九条、自賠法三条によつて原告の後記損害を賠償する義務がある。

3 損害

(1) 入院費用(部屋代) 金一五万〇、五一〇円

原告は本件事故により右下腿裂創、右下腿複雑骨折の重傷を負い、事故直後豊田市所在菊地病院に入院し、昭和四四年七月四日退院(入院日数三一一日)したがこの間の入院部屋代合計一五万〇、五一〇円を支払い同額の損害を蒙つた。

(2) 入院雑費 金九万三、三〇〇円

原告は入院中医師の指示による栄養補給費等諸雑費として一日平均三〇〇円を支出し合計金九万三、三〇〇円の損害を蒙つた。

(3) 休業補償費 金四〇万八、三〇〇円

原告は本件事故当時毎日新聞専売店経営のほか生命保険勧誘業務に従事し、一ケ月平均四万〇、八三〇円の収入があつたが、本件事故による入院中約一〇ケ月間全く右業務ができなかつたため金四〇万八、三〇〇円の損害を蒙つた。

(4) 逸失利益 金二六九万二、五六〇円

原告は本件事故当時前記新聞販売店を経営し一ケ月平均朝刊六三八部、夕刊四一〇部を扱つていたが、本件事故による入院のため臨時補助者を雇つて右部数減少阻止に努力したが及ばず、ついに事故発生後三ケ月後の昭和四三年一二月からは右部数が朝刊二〇八部、夕刊一〇〇部減少(担当区域の一部減)を余儀なくされ、右減少は原告の後記後遺症を考慮すれば、今後原告の就労可能全期間(原告の年令は事故当時五三才であるから、その後一〇年間)を通じて回復不可能と考えられる。

そして右朝刊は一ケ月一部金六六〇円夕刊は金五一〇円であり、新聞販売の平均利潤率は一五%であるから右減少部数に対する一ケ年の利潤減少高を計算すると

{(660×208)+(510×100)}×0.15×12=33万8,900

金三三万八、九〇〇円となるから、今後一〇年間の右逸失利益の現価をホフマン式計算により認定すると二六九万二、五六〇円となる。

(5) 慰藉料 金二五〇万円

原告は前記入院のほか、現在まで一一五日通院加療しているが、まだ全治せず、症状固定後も右足が四、五センチ以上短かくなることは間違いないとの医師の判断であり、生来頑健であつた原告が本件事故の受傷の治療のため長期の治療と右後遺症に今後苦しまねばならず、その精神的苦痛は甚大であつてその慰藉には金二五〇万円が相当である。

4 結語

よつて原告は被告に対し損害金合計五八四万四、六七〇円とこれに対する本訴状送達の日の翌日から右支払ずみに至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  被告(本訴請求の原因に対する認否および被告の主張)

1 請求原因第一項中(1)ないし(3)の事実および(4)の事実のうち衝突の事実を認めその余の事実は否認する。

2 同第二項、第三項の事実はすべて否認する。

3 免責の主張

本件事故は次の如き原告の一方的過失に基因するもので、被告は正常な車両を正常に運転しておりなんらの過失もなく、また保有者責任も負わない。すなわち原告は無免許で原付自転車に乗つて運転未熟であるうえ、雨の降つた悪路を左寄りに寄らず中央付近を時速約三〇キロメートルで進行し、かつ見通しの悪い本件カーブで前方不注視のため至近距離で被告運転車両を発見し、さらに砂利上で原付自転車をスリツプさせそのステツプを停止した被告運転車両の前照灯付近に衝突させたものである。

三  原告(被告の主張に対する答弁)

免責の主張事実は争う。仮に原告がその通行区分を外れて被告の進路上に進入したとしても、本件事故現場はかなりの坂道である上に未舗装の砂利道で中央が掘つたように陥没してあたかもアリ地獄状になつていたのであるから、被告において原告の如き通行方法をとる車両の存在を予見して進行すべき注意義務があるのにこれを怠つた過失がある。

(反訴)

第一申立

一  被告(反訴請求の趣旨)

1 原告は被告に対し金八六万三、〇〇〇円および右金員に対する反訴状送達の日の翌日から支払済まで年五分の割合による金員を支払え。

2 訴訟費用は原告の負担とする。

との判決並びに仮執行の宣言を求める。

二  原告(反訴請求の趣旨に対する答弁)

1 被告の請求を棄却する。

2 訴訟費用は被告の負担とする。

との判決を求める。

第二主張

一  被告(反訴請求の原因)

1 原告は本訴請求の原因記載のとおりの交通事故で負傷し損害を蒙つたと主張し、無過失の被告を相手に本訴を提起したものであるが、さらに本件交通事故について被告は昭和四四年一月一七日豊田簡易裁判所において業務上過失傷害事件として罰金七、〇〇〇円の略式命令を受け、これを不服として正式裁判の請求をなし、右裁判所は昭和四四年一〇月三日罰金七、〇〇〇円に処する旨の判決を宣告した。さらに被告は右判決を不服として名古屋高等裁判所へ控訴したところ、昭和四五年三月二日被告には業務上の過失はまつたくないとの無罪判決が下され、検察官の上告もなく右判決は確定した。

右無罪判決に至るまで被告は刑事被告人として、又本件本訴の不当な提起によりその家族一同とともに心労を重ねその精神的苦痛は筆舌に尽し難いものがある。

被告がこのような状態となつたのは、原告が不当に本件本訴を提起し、さらに捜査機関又は刑事公判廷において自己の過失を全面的に秘匿し、むしろ「原告が道路の左端を走つていた」との趣旨の供述、「被告運転車両が道路中央付近を走つてきた」との趣旨の供述、「原告は危険を感じて左へハンドルを切つた」との趣旨の虚偽の供述をくりかえし、故意に虚偽を申述したため被告が起訴されたことに起因するもので、従つて原告は民法七〇九条により、被告に対し被告の刑事、民事事件に不当にまきこまれたことによる精神的苦痛に対する慰藉料として金五〇万円、右業務上過失傷害被告事件の一、二審の弁護料、二審無罪判決の謝金、岡崎検察審査会への原告の道路交通法違反被疑事件不起訴処分に対する審査請求手数料、および本件本訴の代理人に対する着手金、訴訟費用等の合計金三五万円を支払う義務がある。

2 本件事故は本訴請求原因に対する被告の免責の主張で述べたとおりもつぱら原告の過失で発生したものであるから、民法七〇九条により原告は被告の普通貨物自動車の修理費用金一万三、〇〇〇円を支払うべきである。

3 よつて被告は原告に対し損害金合計金八六万三、〇〇〇円および右金員に対する反訴状送達の日の翌日から支払済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める。

二  原告(反訴請求の原因に対する認否および原告の主張)

1 反訴請求原因第一項中被告がその主張のとおりの刑事裁判を受け、第二審において無罪判決が確定した事実は認め、その余は否認する。

2 同第二項の事実は否認する。

3 仮に被告に刑事裁判による損害が発生しているとしてもそれは検察庁の不当起訴又は裁判所の判断の誤りであつて国家賠償の問題であり、原告は捜査機関および裁判所に記憶のまま同一の供述をしており、右供述についての評価が検察庁第一審裁判所と第二審裁判所においてくいちがつたにすぎず、原告は右判断に何等決定的原因を与えていないから、被告の損害を賠償する責任はない。

4 原告は本件本訴を提起した際には被告が罰金刑に処せられ、従つて過失責任を負うべきであると確信し、その確信に過失はなかつたのであるから、本訴提起による被告の弁護士費用、訴訟費用を原告が負担する理由はない。また刑事第二審判決の被告の速度の認定は事実誤認である。

5 仮に原告が本件事故につき自己の何らかの過失を秘匿し、虚偽の供述をしたと認定されるとしても右秘匿と供述は憲法上の権利であるから右をもつて不法行為とすることは失当というべきである。

(証拠関係)〔略〕

理由

一  本件事故発生の原因

本訴請求原因第一項記載の日時・場所において、原告運転の原付自転車と被告運転の普通貨物自動車が衝突したことについては当事者間に争いがない。本件事故発生の原因につき争いがあるのでまずこの点につき判断する。

〔証拠略〕を総合すると次の事実が認められる。

本件事故発生現場は、ほぼ東南から南西にカーブした幅員約三・八メートルの未舗装の道路上である。

右道路は現場付近で東南から北西に走る幅員約三メートルほどの未舗装の道路に分岐して三叉路の形態をなしているが、ほとんどの車両が右三叉路を東南―南西方向に通過するため、三叉路の北西方向の道路入口付近に土砂がおしのけられて二〇センチ以上の高さに積みあげられ、かつ東南から前記カーブを南西に進行する車両からみて左手はカーブに添つて数十センチの高さの土手状をなし、かつそのうえに本件事故当時人の背の高さ程度の雑草が繁り右カーブを進行する車両にとつては、東南から進行した場合は左手前方が、南西方向から進行した場合は右前方の見通しが極めて悪い状態となつている。また現場付近は南西方向から進行する車両にとつてやや上り勾配になつており、事故当時は雨あがりで、路面は泥ねい状態となつていた。

被告は普通貨物自動車(トヨタパブリカ―車幅一・四一五メートル)を運転して時速約三〇キロメートルの速度で、本件カーブに東南方向から南西方向に進むためさしかかり、カーブを曲る直前、左前方約一一・九メートル付近に南西方向から東南方向(対向方向)にすすもうとしている原告の乗つた原付自転車を発見、カーブ地点でのすれちがいに備えただちに左に寄り、減速徐行の措置をとり約一〇キロメートル程度でカーブ地点を曲ろうとしたが、発見地点から約七メートル進行したカーブの頂点付近で、被告運転車両からみて左手路肩から約一・七メートルないし一・八メートル程度(すなわち被告車両左側面から路肩まで四〇センチ前後)の地点で、ブレーキをかけ停止した状態の被告運転車両の右前方前照灯下部付近に原告運転車両の右側ステツプが接触し、原告は前方に投げ出され負傷した。他方原告は原付自転車に乗つて南西方向から東南方向に向うべく本件カーブに時速三〇キロぐらいで進行してきたが、カーブ付近でやや減速し時速約二五キロメートル位で曲ろうとしたが、右カーブは前記のとおり原告からみて左側が土砂で盛り上がる状態をなしているため(盛り上り部分の幅は正確には判明しないがおよそ一メートル近い)左側端を進行しようと思えば右土砂のうえに一度乗りあげざるを得ない状態になつているため、比較的道路の中央に近い部分を走行して前記速度で右カーブを曲ろうとしたところ、直近になつて被告車両を発見し、左に寄ろうとしてかつブレーキをかけたが左側部分の盛り上りのためかえつて被告運転車両の側に近づく結果となつて前記のとおり衝突した。

以上の認定に反する次の各証拠は以下の理由により措信できない。

〔証拠略〕に衝突地点は前記地点ではなく原告の進行方向からみて中央部分よりも左側であつた旨の供述があるが、そうであるとすれば被告はカーブをいわゆる大回り左折で、すなわち中央部を右側にはみ出して進行したことになるが、前記道路状態(悪路)からみて被告がいわゆる大回り左折をせざるを得ないほどスピードを出していたとも考えられず、また被告からみて道路右側が盛りあがつていることおよび約一〇メートル前方とはいつても左前方に原告を発見していることを考慮すると被告車両は左寄りに寄つて進行しようとしたと推認するのが相当であり、右推認と〔証拠略〕の警察における実況見分調書の際の被告の指示はほぼ一致し、信用性が高く、これに反する原告の前記供述は措信できない。

さらに〔証拠略〕には被告運転車両が衝突直前に減速した気配はなかつたとの供述が存するが、〔証拠略〕によつても原告の事故直前の進行速度は時速約二〇キロ前後位あつたのであるが、〔証拠略〕によれば原告運転の原付自転車は右ステツプが曲つたのみで被告運転車両は右前照灯部分のフエンダーがつぶれ、同所下のバンバーが曲つていたのみでその損傷程度が比較的小さいものであることが認められ、衝突時の両車両の運動量はあまり大きなものではないことが推認され、原告車両の速度を考慮すると被告運転車両の衝突時の速度は停止またはそれに近い状態であつたとする〔証拠略〕に信用性が高く、そうであるとすれば、被告車両が原告車両を発見地点から約七メートル程度で、かつブレーキをかけた地点からはさらに短い距離で特にスリツプした状況もうかがえないまま停止していることをも考えあわせれば被告が衝突直前徐行していたと認めるのが相当であり、この点についての〔証拠略〕は措信できない。

その他前記認定を覆すに足る証拠はない。

以上の認定によれば本件事故の原因としては、原告が見通しが悪く路面状態不良のカーブを原付自転車を運転して、しかも道路中央近くを通行するに際して、十分な徐行義務を尽さずかつ前方注視を尽しておれば少くとも約一〇メートル右前方に被告車両を発見し、避譲措置がとり得るにもかかわらず前方注視を怠り至近距離ではじめて発見した過失がまず考えられるのに反し、被告は左寄りを徐行して進行し通常の注意義務を尽していたものであり、特に一時停止の義務あるいは自車の通行区分に進入する車両のあることを予見する義務まで課することのできない本件においては被告は本件事故については過失がないと考えるのが相当である。

〔証拠略〕によれば特に被告運転車両に構造上、機能上の欠陥はなかつたものと認められる。

従つて被告の不法行為責任、運行供用者責任を前提とする原告の本訴請求はその余の点について判断するまでもなく失当であり、被告の反訴請求のうち原告に対し、原告の運転上の過失責任を前提とする物損ならびに反訴に伴う相当因果関係ある弁護士費用を請求する部分は後記認定額の限度で理由があることとなる。

二  反訴請求原因について

(1)  被告が刑事裁判を受けたことによる慰藉料、刑事弁護士費用の請求について

被告がその反訴請求原因で主張する業務上過失傷害被告事件の裁判を受けたことは当事者間に争いがない。しかし検察官の公訴の提起、裁判官の判断はいずれも通常の場合一つの供述、証拠のみで下されるものではなく、総合的な判断としてなされるものであることは公知の事実であるから特段の事情ない限り、交通事故の一方当事者が単に自己の過失を否認し、又は自己に有利な事情のみを供述したからといつて、他方当事者が起訴されたことまたは第一審で有罪判決をうけたこととは因果関係がないと考えられ、本件全証拠を検討しても、被告が刑事裁判を受けざるを得なかつたことが、原告の供述に起因するとの特段の事情はうかがえず、かえつて〔証拠略〕によれば捜査段階において被告が自己の過失を認めた如き供述の存することが認められる本件においてはその余の点について判断するまでもなく、刑事裁判に関する損害が原告の挙動によるものであるとして請求する被告の反訴請求は失当である。

(2)  検察審査会への申立費用等の請求について

〔証拠略〕によれば右審査申立は原告の本件事故時における無免許運転についての道路交通法違反被疑事件についての検察官の不起訴処分を争うものであることが認められる。右申立をするか否かはまつたく被告の自由裁量であつて、原告の挙動とは心情的な関連はともかく法律的因果関係はまつたく存せず、この点についての被告の請求も失当である。

(3)  民事裁判(本件本訴)に応訴せざるを得なかつたことによる慰藉料、弁護士費用等の請求について

記録によれば本件本訴は昭和四四年一一月八日に提起されたものであることが明らかであるが、当時は前記被告の過失責任を問う刑事裁判が進行中でもあり、また交通事故の一方当事者が事故時の状況を正確に記憶していることはむしろまれであることをも考慮すれば原告が被告に対し不法行為責任を問う本件本訴の申立が、その当時原告においてその理由がないことを知り又は知り得べきであつたと認めるに足りる証拠はない。従つてこの点に関する被告の主張のうち後記原告の本件事故による物損の反訴請求に附随する本件事故と相当因果関係ある弁護士費用の請求として善解し得る部分を除いて、その余の点について判断するまでもなく失当である。

(4)  自動車修理代 金一万三、〇〇〇円

〔証拠略〕によれば本件事故の際、原告運転車両との衝突によつて被告所有の自動車のフエンダー、バンバー、前照灯が破損され、その修理費用として金一万三、〇〇〇円を支払い、同額の損害を蒙つたことが認められる。

(5)  弁護士費用

被告の反訴請求の経過、難易、認容額等を考慮すると被告が原告に対し請求し得るところの本件事故と相当因果関係ある弁護士費用として金二、〇〇〇円を認容するのが相当である。

三  結論

よつて原告の本訴請求は理由がないので棄却し、被告の反訴請求は原告に対し金一万五、〇〇〇円および内金一万三、〇〇〇円に対する被告が請求し、本件事故の後である反訴状送達の日の翌日であること記録上明らかな昭和四七年三月一〇日から、内金二、〇〇〇円に対する本判決言渡の日の翌日から各完済に至るまで民法所定の年五分の割合による遅延損害金の支払を求める限度で理由があるので認容し、その余は失当として棄却し、訴訟費用については民事訴訟法八九条、九二条但書を、仮執行の宣言については同法一九六条を適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 安原浩)

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